「誰かが抜けてチーム力が下がるようなチームづくりはしたくない」
代表監督がそう決意するということは、それだけ難しい課題ということだ。
まるでファイナルラウンドまでもつれ込んだ、ボクシングの世界タイトル戦みたいだった。
有効打は出たが決定打がないまま、ジャブの応酬みたいに併せて22本のシュートが飛び交い、タイムアップと同時にゴールネットを揺らしたボールの傍で、相手GKはうつ伏せに倒れたまましばらく動けなかった。
モハメド・アリの有名な試合に「キンシャサの奇跡」と呼ばれる一戦がある。
この試合でアリは終始「効いてないぞ！」「もっと強いパンチを打ってみろ！」と相手の耳元でささやき続けたという。
いくらなんでもヘビー級チャンピオンのパンチなんだから、効いてないわけがない。
相手の焦りを誘うと同時に、自分を奮い立たせるためのメッセージをアリは叫び続け、そして最後には勝者となった。
後半開始と同時に投入されたパオ選手が、まるで野に放たれた鹿のように飛び跳ねながらピッチに入ってきたのは「効いてないぞ！」「まだまだ戦えるぞ！」とステラの選手とサポーターを鼓舞するメッセージであり、そこから活性化したチームは最後の最後で勝者になった。
相手を圧倒してしまうのも強さだが、劣勢や拮抗した展開を耐える力もまた、強さの証である。
ステラはなかなか後者の強さが持てないチームだったが、今年は本当に耐え抜く力を手に入れつつある。
設営、運営を手伝ったユースメンバーとハイタッチで退場。
ジェンさんが本当にうれしそうだった。
強風にも負けず、スーパーセーブを連発。
正直前半であと2点入れられててもおかしくなかった。
スフィーダ世田谷さんが相手とあって、怪獣軍団も観戦。
ももちゃんは、ちょっとおちゃめだった。
試合前は青空が覗いていたが、やがて曇り空にやや肌寒い風が吹いてきた。
もうすぐ梅雨入りらしい。
ただ、この日の終わりは夕焼けが似合った。
