大富豪同人物語：Web連載版　２ｎｄシーズン

◆登場人物＆キャスト
ねじ子（主人公）…三石琴乃
孕（はらみ）店長（アニメショップ「マニアメイト」横浜店店長）…速水奨
男性客…坂口大助
男性店員
女性客たち

○土曜日、午前中
　「マニアメイト」横浜店。エプロン姿のねじ子、開店準備のため店内を巡回中。リモコンで展示用ビデオのスイッチを入れる。ミュージカルの風景が流れ、それに併せて歌うねじ子。
ねじ子「♪あぁラケットを振ればボールが飛んでくよ〜でもラインから出たら負けさ〜それがオレのラッブ！（手拍子）オール！（手拍子）」
　孕店長（白衣姿）、モップを手に近づいてくる。ミュージカル調に歌いながら
孕「♪そんな歌だったかなぁ〜」
　ねじ子、かまわず歌いながら答える。
ねじ子「♪そんな風に覚えちゃったんです〜」
孕「♪お客さんが怒るから開店後はやめてね〜」
ねじ子「♪わっかりました〜」
孕「♪ところで相談があるんだけど〜」
ねじ子「♪なんでございますか〜」
孕「♪もうすぐバレンタインなんだけど〜」
ねじ子「♪そうでございますわね〜」
孕「♪記念フェアをやろうと思うんだ〜」
ねじ子「♪それはいい考え〜でもここに来る腐女子の皆さんは〜」
孕「♪わかってるさルルル〜身近な男子に興味の少ない人たちさ〜」
ねじ子「♪アニメキャラにチョコを贈るコーナーでも作りますか〜」
孕「♪それはいいねラララ〜」
ねじ子＆孕「♪ラララ〜ララララ〜」
　フィギュアスケートのように、滑りながらねじ子をリフトする孕店長。そこへ柱の影から
男性店員「あの、店長、もうすぐ開店スけど」

○昼下がり
　マニアメイト「バレンタインフェア」コーナーに、たくさんの人だかり。
女子Ａ「ねえねえメッセージ、何書く？」
女子Ｂ「何書こうか」
　レジで客の列をさばくねじ子。
ねじ子「はい、メッセージカードとチョコのセット三人分、税込みで２，４５７円になります。ありがとうございました〜」
　一段落して。
ねじ子「はぁ〜、私らに比べると薄い薄いと思っていたけど、最近のお嬢さん達もなかなかね。逆にあの頃こんなにグッズがあっても、ここまでお金注ぎ込めたかなあ……恐るべし腐女子魂。ううむ」
　レジに男性客（二十歳前後）。ねじ子、あわてて
ねじ子「いらっしゃいませ〜。カバーおかけに」
男性客「いいよ」
ねじ子「ありがとうございます。８１９円になります」
男性客「（ぼそりと）いいなあ」
ねじ子「え？」
男性客「女の子は、いいよなあ。居場所があってさ」
ねじ子「あ、ありがとうございました」
　去っていく男性客。後ろ姿をじっと見るねじ子。

○夕方、秋葉原・ネットカフェ「ジャンキーズ」休憩コーナー
　ソファに座り、雑誌を読んでいるぷぢ子。ねじ子、やって来る。
ねじ子「お待たせ〜」
ぷぢ子「おう。話って、なんだい」
ねじ子「ちょっと聞きたいんだけどさ、そっちの男性客って、最近どう？」
ぷぢ子「どうよって、まあ安値安定ってとこかな？ぐわーって感じでもないけど、みんなコンスタントにお金使ってくれてるよ」
ねじ子「ほかには？」
ぷぢ子「うーん……そうだ、通販の比率が増えたんだよ、エロ関係で。忙しいとか遠いとかならわかるけど、どうも店で買うのが恥ずかしいって層が、結構いるらしいんだ」
ねじ子「男子がエロ買うの、恥ずいって？」
ぷぢ子「ああ。特にボブゲーコーナー作ってから増えた。階段で女性客とすれ違うのがイヤだとか、そういう苦情があるんだ。もちろん鉢合わせしない様に、動線は考えてるけどさ」
ねじ子「イヤなんだ、リアル女子が目にはいるのが」
ぷぢ子「ああ。でもこっちもいろいろ難しい訳よ、売り上げ考えるともう女子向けは外せないしさ」
ねじ子「ふーん」
ぷぢ子「そっちだって、ずいぶん前から女性客メインにシフトしてるでしょ？」
ねじ子「うん。なんだかんだで、ハマった時のお金の使い方、すごいからね」
ぷぢ子「すごいよ。オレらもすごかったけどな。やっぱり男子は、年々おとなしくなってくね」
　コーヒーを飲むねじ子。
ねじ子「ちょっと、考えがあるんだけど」
ぷぢ子「なんだい？」

○日曜・夜
　ねじ子にレジ打ちしてもらった男、自室でネットを巡回中。つけっぱなしのテレビ、バラエティーを放送中。ボリュームを下げた感じで笑い声が流れる。
男「……」
　無言でホームページを巡回中。画面隅、二等身アニメ少女のアイコンがアニメーションを始める。
ＳＥ「めーるガ届イタヨ！」
　男性、メールを開く。
メール本文（ねじ子の声で）
「いつもマニアメイトをご利用くださいまして、ありがとうございます。ただいま当店では『殿方のためのバレンタインキャンペーン』を実施中です。詳しくはこのアドレスをどうぞ！」
　男、アドレス部分をクリック。ブラウザにムービー画面が開く。

○ムービー画面
　照明を落としたマニアメイト横浜店、レジ周辺。白衣にサングラス姿のねじ子と、同じく白衣に羽根仮面姿のぷぢ子が立っている。ＢＧＭは「踊るダメ人間」。なめる様なアングルにかぶせて
ＳＥ（女性の叫び声）「キャァーッ！」
ぷぢ子「（おどろおどろしい声で）
マニアメイト・ダークゾーンショッピングへようこそ。この番組では、普段マニアメイトでは扱えない、『ダークな商品』をご紹介いたします。司会は私、外様大名と」
ねじ子「シナモン姫でお送りいたします」
ぷぢ子「今日お届けするのはこちら、『はじめてのまかいぞうセット』です。シナモンさん、こちらの商品ですが」
ねじ子「まずはこちらをご覧下さい」
　少女のミニフィギュア（全高１０センチくらい）を取り出すねじ子。
ぷぢ子「ああ、最近流行ってますね、こういうタイプのフィギュアが」
ねじ子「ええ。中には何体も揃えた方もおられると思いますが」
ぷぢ子「そうですね」
ねじ子「これはそんな方々のための商品です。実はこのフィギュア、服のパーツが外れてしまうんですね（実際に外し始める）」
ぷぢ子「（大げさに）あらあら、ずいぶん大胆な作りなんですね」
ねじ子「ええ。そして裸に剥いた状態で、このようにポーズを取らせることもできますが、それだけではなんだか寒々しいですね」
ぷぢ子「後ろめたさ倍増ですね」
ねじ子「そこでこの『はじめてのまかいぞうセット』略して『はじまか』です。こちらにはこの様に（箱からパーツを取り出す）首輪、皮手錠といった小道具から、レザースーツ、ブーツといったコスチューム、果ては煉瓦の壁、檻、なんかよくわかんないけどすげえ格好で座らせられちゃう椅子など、数々のパワーアップパーツが取りそろえてあります」
ぷぢ子「（大げさに）ああっ、こ、これはいやらしいですね！ランジェリーなんか赤く塗ってあって、通常の三倍いやらしいですね！」
ねじ子「そうですね。さらにバレンタインならではの企画として、今回はこの『溶かしチョコレート』五枚セットをお付けいたします」
ぷぢ子「いろんなところに溶かしていいんですね？」
ねじ子「ええ。お好きな場所に溶かして、垂らして、お召し上がりください」
ぷぢ子「さあ、バレンタイン限定のこの商品、オンライン専門の販売とさせていただきます。なおお届けする際、封筒に社名はお入れいたしません！画面下に出ておりますアドレスから、ぜひご注文ください！」

○男の部屋
　男、少し笑いを漏らしつつ、注文ページを開く。三セット注文。

（２００４年２月８日　２００字×１９枚）