大富豪同人物語：Web連載版　２ｎｄシーズン

○日曜昼下がり、自宅のリビングでネット中のねじ子。
豪太郎「ねじ子さん、ちょっと出掛けてくるけど、なんか買う物あるかい」
ねじ子「……」
豪太郎「聞いてる？」
ねじ子「聞いてるわよ」
豪太郎「機嫌悪いみたいだけど」
ねじ子「別に」
豪太郎「そうかなあ」
ねじ子「ぱんつを新調しようと近所のカジュアルショップに行ったらＬサイズが品薄だったけど、そんな事で『ウチの店はケツのデカい女はお断りですよプププ』なんて脳内電波は届いてないわよ」
豪太郎「……行ってきます、ね」

　外出する豪太郎。ねじ子、キッチンでコーヒーを入れてがぶ飲み。机に戻るとものすごい勢いでマウスをクリックしていく
ねじ子「えいっ！えいっ！この際だから押入ダンスも２つ買っちゃえ！あー、イライラした時は通販に限るわ。そうだ、ジャパネットたかたのチャンネルも見てみよう。新しいダイエットグッズが出てないかな〜……お？」
　パソコンの画面、「ぷぢ子さんからショートメッセージが届きました」の表示
ねじ子「お、昼間からとは珍しいな。なになに『ちょっといい話があるんだ。ボイスモードでよろしく』ぷぢ子がいい話だなんて、気味が悪いけどなあ」
　ねじ子、ヘッドセットをかぶる
ぷぢ子「こんちわー」
ねじ子「なに、昼間っから」
ぷぢ子「奥さん、今日ご紹介する商品はね、とぉっておきですよ？」
ねじ子「高田社長の声真似はいいから」
ぷぢ子「まずはこのホームページに行ってくれよ」
　アドレス、画面に表示される。
ねじ子「なにこれ。オンラインゲームの紹介ページじゃん」
ぷぢ子「そ。高校を舞台にした、ＲＰＧっつーか要はまぁダラダラとチャットしたりクエストしたりするやつなんだけど、先週から始まったばかりで、βテスト中。まだ無料なんだ」
ねじ子「んー、せっかく誘ってもらって悪いけど、もうこれ以上ゲームに時間割けないんだよ。特にオンラインは」
ぷぢ子「まーとりあえず、キャラメイクまでやってくれや」
ねじ子「あいかわらず強引だなあ。仕方ないか。っと、ウチは光だからもうダウソできましたよ、と。インストールして……キャラメイクに来たよ。学校が何校か選べるけど」
ぷぢ子「東京のやつにして。オレもそこだから」
ねじ子「はいはい。男女が選べるけど」
ぷぢ子「そこは女子を選ぶんだ」
ねじ子「チャットナンパがウザいよ」
ぷぢ子「大丈夫、風紀委員のパトロールが厳しいから」
ねじ子「なんだかよくわからないなあ。はい、私そっくりのおとなし目なキャラにしてみましたよ、と」
ぷぢ子「みんなそう言うんだ」
ねじ子「でもせっかくだから、制服は超ミニ」
ぷぢ子「やるねえ奥さん。さあ、登校してくれや。ちょうど今、昼休みだな」
ねじ子「１日分遊ぶのに１日掛かるの？」
ぷぢ子「いや、その辺はうまく調整してる。っと、いま下駄箱にいるのがそうか？迎えに行くぜ」
ねじ子「そうだよ。あれ」
ぷぢ子「なんだよ」
ねじ子「ぷぢ子のキャラ、激ロリなんだけどさ」
ぷぢ子「いいじゃねえかオンラインだぜ？そういうお前さんだって、これのどこがそっくりなんだよ」
ねじ子「学生時代はこんな風だったのよ！」
ぷぢ子「歳月とは恐ろしい物で……」
ねじ子「うるさいわね。もう落ちるわよ」
ぷぢ子「これからが本番なんだよ。校庭に行くから、後ろついてきて」
ねじ子「ほんとの学校みたいだね」
ぷぢ子「だろ？さ、この木陰に座ってだな、画面のモードを切り替えると」
ねじ子「あ、男子がサッカーやってる。懐かし〜！」
ぷぢ子「しかもワイシャツ姿でだ。昼休みのスポーツはこれでなくっちゃね」
ねじ子「これもプレイヤーがやってるの？」
ぷぢ子「そう。キャラの名前に★がついてるのは、運営側の人。学級委員とかはその人達がやってるんだ」
ねじ子「へー」
ぷぢ子「まだβだから校内だけだけど、いずれ周りの商店街とかプレイヤーの家とか、作ってくんだってさ」
ねじ子「いいねえ。でもフツーに学校生活を送るだけだと、すぐ飽きそう」
ぷぢ子「まあそれはそうだな」
ねじ子「それに経験値とかもなさそうだし、なにを目標に遊んでいたらいいのかわかりづらいね」
ぷぢ子「確かに、何やってもよさそうなゲームだと、かえって遊びづらいよな。ってことで『育成モード』があるんだ」
ねじ子「ちょっとそそる単語が出てきたね」
ぷぢ子「キャラの名前に◆がついてるのがそうだよ。基本的にコンピュータが動かすキャラだけど、こっちが働きかけるといろいろ成長していくんだ」
ねじ子「すると当然」
ぷぢ子「男子を選んであるよ。鉄棒に座って話し合ってる二人、いるだろ？その片っぽがそうだよ」
ねじ子「すでに他の育成男子とラブラブっぽいんですが……あぁ、見つめ合ってるぅ〜」
ぷぢ子「ここまで来るのに、苦労したよ」
ねじ子「私も早く作りたい！」
ぷぢ子「だろうと思った。β会員登録すると、作れるよ」
ねじ子「ありがとう！」
ぷぢ子「おっと、その時紹介してくれたユーザーに、オレを推薦してくれるとありがたいね」
ねじ子「やっとくわよ」
ぷぢ子「さんきゅー。それやってくれると、所持金が増えんだよな」
ねじ子「なるほど。じゃあ、またね」
ぷぢ子「おう、またな」
　ねじ子、会員登録画面でいろいろと入力していく
ねじ子「えーとえーと、やっぱりゲームなんだから、実生活で味わえない事をやらないとね……」

○夕方。豪太郎、帰ってくる
豪太郎「ただいま。ねじ子さーん、マーロウのプリンと、あと、Ｌサイズのショーツ、まとめ買いしてきたよ。これで機嫌を直してくれると……」
　ねじ子、画面を前に居眠り中
豪太郎「そろそろ涼しくなってきたから、風邪を引くよ」
　カーディガンを掛ける豪太郎。画面を覗く。育成キャラの男子が映し出されている
豪太郎「……だからさ、なんでキミはこういう時に……僕と全然違うタイプを選ぶんだろうねえ？別に気にしてないけどさぁ」
ねじ子「（薄目を開けながら）……ぐぅぐぅ……もう食べられないよ……」

（２００３年１０月５日、２００字×１６枚 ）