大富豪同人物語：Web連載版

――日曜昼下がり。清水港沿い、エスパルスドリームプラザ。
ねじ子「もう、人数わかってるんだし、予約ぐらい入れておいてよね。豪太郎さんだってせっかく来てくれたんだし」
ねじ子パパ（声・立木冬彦）「あぁ、悪い悪い。こんなに混んでるなんて思わんかったんでねえ。豪太郎君、どうだい清水は暖かいだろ？」
豪太郎「ええ、東京より風がやわらかいですね」
ねじ子ママ（声・千々松幸子）「まあ、詩人みたいな事おっしゃるのね豪太郎さんは。今度ねじ子と一緒に本なんか」
ねじ子「わあっ！」
ねじ子ママ「何ヘンな声出して」
ねじ子「……あ〜まだなのかしら。お腹も空いてきたのに。あれ、お父さんは？……やめてよ！たこ焼きなんか買わないでよ！」
ねじ子パパ「うまそうじゃん。マヨネーズも掛かってるし。豪太郎君もどうだい？東京の味だよ」
豪太郎「いただきます」
ねじ子「いいわよ食べなくたって！ほらお店の人呼んでるわよ、入りましょ」
――レストランにて。
ねじ子パパ「む〜悩むな〜。ハンバーグならＡセットだけどエビフライのＣセットも捨てがたいし、いっそ食べ放題」
ねじ子「また３０分悩むからメニュー見るの禁止！豪さんＡセット、私Ｂ、お父さんがＣでお母さんがＤ、あと生４つ！」
ねじ子ママ「あらここ、誕生日だとケーキサービスがあるのね」
ねじ子「お母さんの誕生日、２月でしょ」
ねじ子ママ「わかりゃしないわよ。あ、このバースデーセットお願いね。ケーキはモンブランで」
ウエイトレス「かしこまりました。お帰りの歳にバルーンブーケのプレゼントもございます」
ねじ子ママ「あらうれしい」
ねじ子「この後買い物もするのに、そんなの持っていけないわよ！」
ねじ子「何騒いでるのよ。ヘンな子ねえ」
ねじ子パパ「どうだい豪太郎君、楽しいだろう？」
豪太郎「そうですね」
ねじ子「楽しくないよ！」
ねじ子パパ「さあビールが来たぞ、乾杯しよう」
ねじ子「この人たちペースがわからない〜（泣いてる）」
ねじ子ママ「でも本当にいいんですか豪太郎さん、いい年して漫画に夢中な娘なんですけど」
豪太郎「いやあ、夢中になるものがあるのは、いいことです」
ねじ子パパ「そうだろう？夢中になるのはいいことだ。私もゴルフを続けて４０年になるが、ようやく極意というものがわかってきたよ。今度いっしょにどうかね」
豪太郎「いいですね、お手本をお願いしたいですねえ」
ねじ子「言っとくけどお父さん、豪さん打ちっ放しなんか行かないんだからね」
ねじ子パパ「なんだ練習不足なのか。勝負は見えたな」
ねじ子「コースにしか行かないのよ！それも海外のちゃんとしたところの。専属のレッスンプロだっているんだから」
ねじ子パパ「やいやいこりゃいい人がやって来てくれたなあ。ねじ子も案外とやる女だなあ」
ねじ子「（また泣いてる）」
ねじ子ママ「ところで豪太郎さん、アニメの会社のお知り合いはいるのかしら？」
ねじ子「（鬼の形相で）とつぜん何言い出すのよ」
豪太郎「スタジオ・バーケンティンのプロデューサー、北極さんなんかとはよく飲む仲ですけど」
ねじ子ママ「『あしたのジョー』ってご存じ？あれってビデオか何か出ないかしら」
豪太郎「たぶん出てると思いますよ？」
ねじ子ママ「よかった。出てなかったらその北極だか南極さんにお願いしたいところだったわ。結婚した頃テレビでやっていて、アニメってそれまでディズニーとか手塚とかウネウネ動く気持ち悪いのしかなくてそれは嫌いだったんだけど、あれはスーッって画面が引いたと思うとバシってパンチが決まってそこでバシャーッって止め絵になってうわーカッコいい！って感じで。もうしびれちゃって、どれくらい素晴らしいか友達全員に手紙まで書いちゃったんだけど」
ねじ子「そんなことやってたのかーっ！……せっかく豪さんが来たのに、なんでこんな話ばかりを……」
豪太郎「よかったなあ」
ねじ子「え？」
豪太郎「素晴らしいご両親じゃないか。僕はねじ子さんと知り合えて、本当によかったと思うよ」
ねじ子「そ、そうかしら」
豪太郎「僕たちもこれくらい、仲のいい二人になりたいね」
ねじ子「う、うん（確かにうちの両親、仲は悪くないんだよなあ……）」
――３日後。東京、有明。豪太郎のオフィス。
イリア「はい、アキヅキでございます……少々お待ち下さい。社長、ねじ子さんのお父様からです」
豪太郎「ありがとう。もしもし？お父さんですか？」
ねじ子パパ「おう、豪太郎君か。ジョーのＤＶＤありがとう。妻も喜んでいるよ。プレイヤーまで送ってくれて、悪いなあ」
豪太郎「いえいえ」
ねじ子パパ「それで質問だがねえ、あれはその……海外のディスクも見れるのか」
豪太郎「ああ、プレイヤーがリージョンフリーになってますから、大丈夫ですよ」
ねじ子パパ「（小声で）エッチなやつもかね」
豪太郎「ええ」
ねじ子パパ「（さらに小声で）金髪もかね」
豪太郎「ブロンドもプラチナもブルネットもすべてＯＫです」
ねじ子パパ「よし、ありがとう！また遊びに来てくれよ。今度は刺身のうまいところ連れてってやるからさ」
豪太郎「はい、お願いします。それでは……。金髪か。よっぽど好きなんだろうなあ」
イリア「？」


【備考】
「プロデューサーの北極さん」：本名、北極五郎。アニメ「暴走姉妹タッチ＆ゴー！」「宇宙機動空母ヒナギク」などの制作に関わる。気さくな性格のおじさん。（なおモデル本人からは、御了承をいただいております^^;）