大富豪同人物語：Web連載版

――日曜昼下がり。スターバックス静岡呉服町通り店。
ねじ子「ありがとうございました、豪太郎さん。ほんとにもう田舎者の両親でして」
豪太郎「いや、いいご両親だったと思うよ。後でよろしく言っておいてね」
ねじ子「ええ、それは。二人となかなか豪さんのことを信じてくれなくて、すみませんでした」
豪太郎「まあ、冷静に考えたらあり得ない話だしね。でも、わかってくれて良かったじゃないか」
ねじ子「はい。でも、料理、お口に合いました？旬だからってお魚ばっかりだったし、もう少し考えてくれても」
豪太郎「大丈夫大丈夫、ご飯もおいしかったし、空気はあったかいし、街はのんびりしてるし、老後はここで暮らそうかなあ」
ねじ子「そ、そうですね（小声で）耐えられるかなあ……スタバもようやくできた、夜八時には真っ暗になっちゃうこんな街に……」
女性の声「あれ？ねじ子じゃない？」
ねじ子「その声は……ようこそヨーコちゃん？」
陽子（声・かないみか）「お久しぶり〜。そっちは彼氏？」
ねじ子「そ、そんなとこかなワーハハハハ……豪さん、こちら高校時代の友人で、陽子ちゃん」
豪太郎「初めまして」
陽子「あらあら、素敵な方……あのオクテのねじ子がこんな彼氏つかまえるなんて、どういう風の吹き回し？」
ねじ子「いやそれは、いろいろあって……今週は横浜から帰って来たの。親に挨拶ってやつで」
陽子「はぁ〜あのねじ子が、とうとうそこまで……あたしなんかさ、もう二人目がお腹に」
ねじ子「あらま〜。おめでとうございます」
陽子「いまダンナがサッカースクールまで上の子迎えに行ってんの。ここで待ち合わせして、買い物なんだ」
ねじ子「たいへんだね」
陽子「慣れればそうでもないよ〜。子供にかこつけてアギトのグッズ買えるし」
ねじ子「やっぱハマってんだ。ママはそれができるからいいなあ。あたしも早くなっちゃおうかなあ」
豪太郎「？」
ねじ子「（ちょっとあわてて）そうだ、あの店まだある？学校の帰りに寄ってた、マンガ専門店」
陽子「さすがになくなっちゃったよ」
ねじ子「そうだねえ、あたしたち立ち読みばっかりしてたからねえ」
陽子「その代わりアニメイトができたよ。広いんだよ〜。あと、うちケーブルテレビだから、ヒカ碁もマンキンも東京と同じ時間に見れるよ」
ねじ子「おお！系列局ないから、テレ東のアニメって夢だったもんねえ」
陽子「そうそう。ハジけてたねえ、あの頃のあたしたち」
ねじ子「ハジけてたよねえ。夏休みにアニメ映画見たいからって東京まで行ったり」
陽子「文化祭に同人誌出すからって学校泊まり込んだり」
ねじ子「バニーさんコスプレで出店の売り子してたら行列ができちゃったり」
豪太郎「（……今とたいして変わってないんじゃないか？）」
陽子「そうだ、この前部屋整理してたら出てきたんだよ。あのテープ」
ねじ子「アレ？」
陽子「そう、アレ」
ねじ子「アレはまずいだろう。もうどっかにうっちゃって」
陽子「いやもう、ダンナに頼んでＣＤに焼いてもらった」
ねじ子「やめろよ！嫌々やってたんだからなアレ！」
陽子「そうかなあ。すごい乗り気だったじゃん。そうだ、結婚式で上映しようよアレ」
ねじ子「やーめーてーっ」
豪太郎「なんなんですか、アレって」
陽子「その頃流行ってたアニメのー」
ねじ子「やめろォッ！」
陽子「オープニングに合わせた、コスプレプロモーションビデオ作ったんですけどー」
ねじ子「うわあん」
陽子「この子すんごいノリノリで。パンチラまで忠実に再現しちゃって。回り引きまくっちゃったんですよ」
ねじ子「（泣いてる）」
豪太郎「ま、まあ、若いときはいろいろあるし、いいんじゃないかなぁ？」
陽子「だって。よかったね、理解のある旦那様で」
ねじ子「これだから私立中上がりの奴らは信じられないんだよーッ！ちょっとばかり有名だからって鼻にかけててさー！」
陽子「あら、あんたの中学も有名じゃない。毎年台風で休校になるの、あそこだけだし」
ねじ子「うるせーっ！好きで沼ン中の学校通ってたんじゃねえよ！」
陽子「別名、カッパ中。ジャージ緑だったし」