大富豪同人物語：Web連載版

――日曜昼下がり。ダイナマイト電器秋葉原本店前。
ねじ子「う、さすがに十月も下旬になると風が冷たいなあ。去年のエアテック、悪くないんだけどもさもさして着にくいのよね。さて、もうすぐぷぢ子のヤローがやって来るんだけど買い物につき合ってって、なんだろ。アキバだったら奴一人の方が身軽なんだろうに……おや？」
――ゴルチエの黒スーツに身を固めて、ぷぢ子登場。
ぷぢ子「お待たせ」
ねじ子「？？？」
ぷぢ子「さ、行くわよ」
ねじ子「あんたの仕事内勤って聞いてたけど、営業にでもなったの？」
ぷぢ子「あぁ、言っておけばよかったわね。悪いけど今日は、タメ口やめてくれる？周りの手前もあるし」
ねじ子「どうせオレはアキバ系ファッションの女だよ！セーターだってズボンに入れるさ！ベルトに穴なんか空いてねえさ！喰らえっパンチ→アッパー→相手ガードを見越して→豪快にジャイアントスイーング！」
ぷぢ子「ギギギギブ！ていうかやめて！スーツ皺になっちゃう！ヒールもげちゃう！」
ねじ子「ど、どうだぁ。他人行儀はやめるかぁっ」
ぷぢ子「やめますやめます」
ねじ子「はぁ、はぁ……で、いったい何よ」
ぷぢ子「エロゲー四天王っていたでしょ」
ねじ子「うん」
ぷぢ子「今度奴らがアキバに店出したらしいのよ」
ねじ子「なにっ、新たな資金源か！」
ぷぢ子「違う違う、まっとうなお店よ。うちの上司からそこ見てきてくれって指示が出て」
ねじ子「それでゴルチエ？」
ぷぢ子「まあ、行ってみればわかるわ」
――裏通り、なにやら女性客でいっぱいな店「ドラドラ子猫の住む家」。
ねじ子「ぶわ。どうしたの、このアキバに似合わない風景は」
ぷぢ子「女性専用のアニメショップなのよ。アニメ関連はもちろん、同人からゲームからＤＶＤから、汗くさいデブオタ男どもに邪魔されることなくじっくりと品定めができるってわけ」
ねじ子「（ボソっと）女でも汗くさいデブオタはいるけど……」
店長（声・子安武人）「いらっしゃいませ！あ、これはこれはぷぢ子様にねじ子様」
ぷぢ子「流行ってる様ね」
店長「お陰様で、盛況です」
ぷぢ子「どう？うちの系列に入らない？悪くないわよ」
店長「恐れ入ります」
ねじ子「日曜でもまじめにスーツ姿でお仕事の話とは、ぷぢ子も大変だねえ。ところでバイト君はいっぱいいるみたいだけど、四天王の残りは？」
店長「ただいま、配達に出ております。品物を予約されたお客様でご希望される方は、我々が直接手渡しでお伺いするシステムがございまして」
ねじ子「確かに、近くに住んでたらやってみたい気もするわよね」
店長「（耳打ち）本日のお客様は九州の方でございます」
ねじ子「え！じゃあ交通費とかは」
店長「先方様のご負担です。これでもご予約は年内まで満杯でございまして」
ねじ子「なにか違う店に来てしまったような……って、ぷぢ子？ぷぢ子？」
店長「おそらく奥のフロアでございますね。それでは」
ねじ子「なんだやっぱり単独行動に……オイっ」
ぷぢ子「な、なによ」
ねじ子「それはこっちのセリフよ。なにカゴいっぱいに買い物してんの。視察じゃなかったの？」
ぷぢ子「い、いいでしょう」
ねじ子「ああ、ここ十八禁フロアなんだ。でもあんただったらここでなくたって」
ぷぢ子「ボーイズゲーが社販で買えるかッ！仕入れ担当の男に『来月のコレなんだけどさあ』ってカラフルピュアガール持参で指定できるかッ！あんな女体肉色画像でいっぱいの雑誌を！」
ねじ子「まあ、それもそうね。通販って手もあるけど」
ぷぢ子「それもいい！悪くない！しかし、やっぱりさまざまなエロ表紙やエロジャケットが視覚いっぱいに広がるトリップ感つーのは、捨てがたい魅力な訳よ」
ねじ子「語るなあ」
ぷぢ子「そんなこと言って、あんたも買うんでしょ？」
ねじ子「おお、すまん。せっかくだからね」（ごそごそと買い漁り始める）
――三時間後。店舗内カフェコーナー。
ねじ子「おー、ウェイターがみんな細身でガクラン姿！学園祭気分だよ、たまらんですなー！」
ぷぢ子「しかし、あいつらもあなどれないなあ。♂オタ市場は頭打ちだから、これからは♀オタを視野に入れて商売していかないと」
ねじ子「♂オタの趣味力（しゅみちから）って、若い時の瞬発力はすごいんだけど、三十路を過ぎると仕事やらなんやらで忙しくなって、急に衰えたりするからなあ。その点♀オタは持久力が半端じゃないから、お母さんになっても時間を作って続けていく人多いし」
ぷぢ子「コマダム系もいたぜ。旦那知ってんのかなあ」
ねじ子「知らないんだろうね。まあ、生半可な知識で口挟まれるより、ずっといいさ」
ぷぢ子「そうだね。この店なら男の眼も気にしないでお茶もヤオ話もできるし……あれ？あのゴスロリちゃん、クリスじゃねえか？」
ねじ子「あ、ほんとだ。あの子痩せてるから似合うんだよね」
ぷぢ子「小デブシスターズとしては悔しい限りだね。冷やかしてやろうぜ。お〜い」
クリス「……」
ねじ子「無視すんなよ〜。なんだよそのでかい紙袋〜」
クリス「……べ、別に。お二人みたいにエッチな本やゲームなんか買ってませんよ」
ねじ子「あ〜ら抜かしてくれるわね、この子ったら」
ぷぢ子「フフフ、果たしてそうかな？おれぁおせっかい焼きのスピードぷぢ子！俺は即売会で育ってきた！だから一般向けと成人向けは匂いでわかる！……くっせーっ！こいつはくっせー！十八禁の匂いがプンプンするぜーッ！こんなエロには出会ったことがねえほどなァーッ！ジャケットがかわいいから間違えて買っただと？ちがうね！このゲームは生まれついてのエロだッ！」
クリス「返してくださいよ〜ッ！」
ねじ子「豪さんの手前見て見ぬ振りもなんだし、悪いけどあとで返品しに行くからね」
クリス「うぇ〜ん」
ぷぢ子「けどアレだな、十八禁な内容を本当に十八歳まで知らないと、かえってヤバ気な婦女子になっちまうんだよなあ」
ねじ子「勝平ちゃんはそんな悪いことしない人だと思うけど、これからまだまだ長いしね。一本だけ許してあげる。今度からはうまくおやりなさい」
クリス「ちぇっ」
ねじ子「相変わらずかわいくない奴だなあ。つーか、今の子はいいねえ。至れり尽くせりだよね」
ぷぢ子「ああ、今の子はいいねえ。至れり尽くせりだよ。あんなことまで、さ……」
ねじ子「？？？」