大富豪同人物語：Web連載版

――土曜朝。上野駅発の特急電車、車中。
豪太郎「おはよー。休みなのに、朝早くごめんね。なるべく早いうちに着いた方が楽かと思って」
ねじ子「あふ……いえ、お構いなく。豪さんも忙しかったんでしょ？着いたら起こしてあげるから、眠ってていいよ」
豪太郎「うん、それじゃあお言葉に甘えて……ぐう」
ねじ子「わー、もう寝ちまったよ。よっぽど疲れてたんだなあ。無理もないか、ここ一ヶ月ずっと、半分泊まり込みで仕事だったし。一段落付いたおかげで、こうやって三連休に温泉旅行に行けるわけだけど、気がかりなのは……ぷぢ子に言われて旅行パンフ見たら『子宝湯』で有名なとこだったよ、行き先……。まさかそんなダイレクトな思惑だけで旅行組んだとは思えないけど、やっぱり豪さんも男だからなあ。つき合って１年以上にもなるし、この辺でドバァっとやらせてあげないと逃げられちゃうよねえ？まぁこっちもさすがに初めてじゃないけどブランクもあるし、だからってどこで練習すんだって話もあるし、ああもう何がなんだか……ぐう……」
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豪太郎「ねじ子さん、着いたよ。起きて」
ねじ子「…え？（寝ヨダレを拭く）あ、ああ。降ります降ります網棚の荷物…って、タクシー？私、電車乗ってなかった？」
豪太郎「もう旅館だよ。あんまり起きないから、だっこして連れて来たんだよ」
ねじ子「ううっ。ごめんなさい」
豪太郎「ははは、疲れてるのはお互い様さ」
――温泉旅館「の乃字亭」天秤の間。
豪太郎「じゃ僕、ひとっ風呂浴びてくるから。ねじ子さんも後で来るといいよ」
ねじ子「は〜い……さぁ、混浴のお誘いだ。しかもまっ昼間から。覚悟はしてたけど、やっぱりき、気分がなんだか……そうだ、ぷぢ子がこんな時に使ってとせんべつを……（バッグを開ける）……（まじまじと眺める）……ギャッ！どこの世界に越中ふんどしで混浴する嫁入り前の娘がいるか！きっと秋葉原駅前のあの店で買いやがったな。ヤロー、帰ったらとらのあなで一日店長の刑だ！くそう…」
――夕方。旅館のロビー。
ねじ子「ああ、気疲れする一日だなあ。結局露天風呂でも別になんにもなかったし。だいたい貸し切りでもないのに、そんなご乱心する人でもないか。……い、いや、そうなると今夜が心配だっ。あんなにピシッと割れた腹筋で、引き締まった上腕二頭筋で、無駄のない僧帽筋で、どんな『おいた』を私にしでかすかと思うと……いやいやいやーっ！気分転換におみやげでも……しまったーっ！店内子宝グッズでいっぱいじゃーん！ああっ、どう見ても女子な中学生が子宝飴をーっ！わかってやってんのか？やってんのか？だから剥くなーっ！舐めるなーっ！何しにここに来てるんだーっ！……って、思わず我が手が触れた物を見てみれば、こ、これはティムポ型のパター！しかも黄金色！やったぜ、これで君にもカップイン！飛ばすぜ夜の十八番ホール！……バカバカバカーッ！こんなもの店頭に置くなよーっ！しかし、これだけティムポネタやグッズがあふれてると、即売会とはまた違うクラクラ感が……（ばったり）」
――ふたたび天秤の間。
豪太郎「大丈夫かい？」
ねじ子「は、はぁ、なんとか」
豪太郎「湯当たりでもしたのかな。まだ二日あるんだし、のんびり休むといいよ」
ねじ子「いや、それだと今夜の豪さんお楽しみタイムが」
豪太郎「？」
ねじ子「だって、わざわざこんなティム…子宝の湯に連れてきてくれたんだし、だったらそういうの、応えてあげないと悪いだろうと思って、その」
豪太郎「あ、この温泉のこと？忙しかったんでイリア君にプラン組んでもらったんだけど、ほら、彼女そういう日本の風習わからないから。僕も気がついたけど、わざわざ言うほどのことでもないと思って」
ねじ子「じゃあ、偶然だったの？」
豪太郎「そうだね。もともと昔からの道祖神信仰がこういう風習と繋がっているって言うし、その辺は大らかに考えてもいいんじゃないの。だからねじ子さんも、そんなに構えないでふつーにしててくれればいいよ」
ねじ子「なぁ〜んだぁ〜っ……ああ、安心したらおなかが空いたよ〜っ！ボタン鍋食べよう豪さん！地酒も頼んでいいよね！」
豪太郎「ははは、そうだね」
――翌朝。
豪太郎「おはようございます。お目覚めの気分はいかがですか？」
ねじ子「あっ、その、えー、たいへんさわやかです」
豪太郎「それはよかった。さいわい天気もいいし、朝風呂でも浴びてこようか」
ねじ子「ところで豪さん」
豪太郎「なんだいねじ子さん？」
ねじ子「なんであんなストッキング持って来たの？」
豪太郎「ふふふ。それはね、基本だからさ」