大富豪同人物語：Web連載版

作者もすっかり忘れていた、デトロイトの借金王が帰ってきました。
――土曜午後。有明。豪太郎のプライベートオフィス。
豪太郎「しかし、久しぶりだな。急に事業拡大なんか発表して、どうしたんだ？債務の返済が終わったのか？」
レオン（声・小杉十郎太）
「無にも等しいとも言えよう、これまでの借金など、このレオン・ゴールドバーグにとっては！」
豪太郎「なにトミノ口調でしゃべってるんだ。言っておくけど、この国で牛丼とハンバーガーとカジュアルファッションの店は、もう儲からないからやめておけよ」
レオン「いや実は、知り合いのインド人から身寄りのない少女がいるって聞かされてさ。かわいそうだから援助してあげたらこれが大当たり！ダイヤモンド鉱山の権利金が」
豪太郎「大丈夫か？熱病にでもなったか？」
レオン「まぁこのビジネスプランを見てくれ」
豪太郎「でかい店舗だな〜」
レオン「カルフール幕張店の五倍の大きさだよ。上海という地を考えれば、これでも狭いくらいだ」
豪太郎「また大きく出たな……上海？」
レオン「ああ。やはり新世紀はアジアに目を向けるべきだ。コスプレイベントに軽く二十万人が来るんだぜ。そこに総床面積二十五万平米のアニメショップ！すごい需要だよこれは」
豪太郎「理屈としてはわかるけど、お前アニメショップの経営とか経験あるのか？」
レオン「ぬかりはないよ。クライアントからマニアメイトのミスター・ハラミを紹介してもらった。彼は実に優秀な男だ。グッズビジネスのすべてを教わったよ」
豪太郎「（小声で）あちゃー」
レオン「これからさっそく視察なんだ。現地に着いたら連絡するから、メールを待ってろよ」
豪太郎「あ、もうビザも取れたんだ」
レオン「ビザ？」
豪太郎「上海だろう？観光目的でもパスポートだけじゃ、確か」
レオン「パスポート？」
豪太郎「まさかとは思うが……（地球儀を取り出す）上海がどこにあるか、指さして見ろよ」
レオン「ん〜と、ん〜と（汗だく）」
豪太郎「地名はローマ字で書いてないから、お前には読めないよ」
レオン「わからないーッ！上海って日本のどこ？」
豪太郎「中国だ！大陸の！」
レオン「えーっ？だって、北京と東京って字が似てるから、同じ国だと思ってたよ……」
豪太郎「よくここまで来れたね（ため息）」
レオン「実は昨日、関西空港の方に行っちゃって。そこからまた新幹線で……」
豪太郎「悪いことは言わないから、一生ミシガンで暮らした方がよくないか？」
レオン「イヤだ！あんな田舎で腹の出たうすぎたない中年相手に商売するのはもうゴメンだ！僕は日本や中国のオタクな美少女ちゃん達と」
豪太郎「あからさまに本音を吐くなよ！だいたい日本だって、そんなに美人ばっかり同人やってるわけじゃないよ。中にはちょっと顔やファッションがルール違反の人も」
レオン「ミス・ネジコとか？」
豪太郎「はぁああああ〜っ（気を溜めている）」
レオン「冗談だよ！」
豪太郎「今度やったら、保安部に武器の使用を許可するからな」
レオン「や、やりません……」
豪太郎「明日にでも秋葉原に行って、同人ショップでも何軒か回ってこいよ。なにか困ったら、ダイナマイト電器のこの人に聞いてみるといい」
レオン「ありがとう。きっと僕だけのオタクな美少女ちゃんを」
豪太郎「だからそれはよせよ！」
――翌日の夕方。ねじ子のアパート。
豪太郎「ああ、ごめん。電話だ……レオンか？成果はどうだった？」
レオン「つかれた……」
豪太郎「どうだ？慣れるまでしばらく日本で修行していくか？」
レオン「そうする……」
豪太郎「ヘンだな、妙に疲れた声だ。体力は僕と互角だったのに、暑さにやられたかな？おーい」
レオン「それはだ……」
ぷぢ子「電話貸せ！ああ、豪さん？ダメだこの外人、知識ウスウスなのにヘタレだって自覚がねえよ！オレが一から叩き直してやる！」
豪太郎「そ、そりゃどうも」
ぷぢ子「よし、明日からびしびし行くからな！ところでデトロイトってさ、ケネディスペースセンターまでどれくらいだ？」
レオン「飛行機と車でだいたい、四時間以上」
ぷぢ子「遠いーっ！使えねえ街住んでんなあ！せっかくだから、ＮＡＳＡでも案内してもらおうと思ったのに」
レオン「アメリカの人がみんなＮＡＳＡに詳しいわけでもないよ……」
ぷぢ子「じゃあ初代バルイーグルとかも知らねえんだ。うわー、やっぱりウスいよこいつ」
レオン「わけのわからないこと言う人だ……ああ、白馬に乗った同人プリンセスはいつ現れるんだろう……」