大富豪同人物語：Web連載版

――日曜日昼下がり。ダイナマイト電器秋葉原本店エロゲー館。
ぷぢ子「ぐあああ、なんだって毎週毎週こんなに新作が出るんだーっ！♂オタども、そんなに毎週毎週タネを発射してて大丈夫なのかーっ？おかげでオレ様までレジ打ちーっ！早く突発本やりたいのにーっ！」
黒服の男３人「ごめんください」
ぷぢ子「いらっしゃ……おわっ、エロゲー四天王じゃんかよ！この忙しいのに、なにしに来やがった」
ケン「いえ、違います」
ヨージ「僕たちエロゲー四天王から卒業します」
ぷぢ子「卒業？」
アヤ（声・子安武人）「申し遅れました、私リーダーのアヤと申します。特徴は妙なもみあげ」
ぷぢ子「いや、自己紹介はいいけど……どうしたの？」
ケン「木を見て森を見ず、という言葉があります」
ヨージ「我々は日夜エロゲーの攻略に没頭し、エロゲーのことなら世界でトップクラスまで極めたと自負していました」
ぷぢ子「はあ」
アヤ「しかし一方で悩んでもいたのです、エロゲーとは何かと」
ケン「エロゲーとはすなわち、女心をあやつり思うまま女体を味わう、そこに尽きるのです」
ヨージ「しかし、チャートに基づいて攻略すれば誰もが同じようにエンディングを迎えられる、そんなものが果たして女心と言えるのでしょうか」
ぷぢ子「夏コミで『エロゲー批評』でも出すの？」
アヤ「ということで我々はエロゲー四天王を卒業し、女性の心を探究する修行の旅に出ます」
ぷぢ子「極端と言えば極端だけど……とりあえず、オレ様のために行列整理でもやってくれる？」
３人「喜んで！」
――突然照明が消え、店内まっくら。窓の外に稲光。
ぷぢ子「うわ、またかよー。今年の夏、天気おかしすぎ！」
アヤ「いや、様子が違うようです」
ヨージ「あれは！」
――隣のビルの屋上に、黒マント姿の男。
マント男（声・結城比呂）「フハハハハ！墜ちたな四天王！そんなことでエロゲー道が極められると思ったか！」
ぷぢ子「誰？あのちっちゃい高見沢な人は」
アヤ「四天王最後の一人、オミです。最後までこの卒業には反対だったのですが……」
オミ「そこまでして女を追求したいなら、これをクリアしてからにするんだな！」
ケン「ああっ！ビルの壁面がスクリーンに！」
オミ「見よ！このためにオレが勝手に作った、KANONスペシャルバージョン！通常のKANONより三倍難しい！女たちが三倍わがまま！どうだ、クリアできるかーっ！」
ぷぢ子「そう、そこそこ。店頭在庫なくなったから、倉庫から出してきてね」
オミ「人の話聞けよーっ！」
ぷぢ子「ハァ？ボコって欲しいンなら、時期を選べよな」
オミ「おのれえぇ〜っ！」
謎の男「その勝負、僕が受けよう！」
ぷぢ子「誰？」
勝平「今度の夏コミ本でついに名字ができた、プログラマー兼（エロ）ゲームおたく角田勝平！」
クリス「同じく今度の夏コミ本で『クリスティーヌ・アキヅキ・ダ・シルバ』なんて長いフルネームをもらっちゃった、秋月クリス！」
ぷぢ子「ひょっとして、この暑いさなかにアキバdeデート？」
勝平「ええ、新しいノートパソコンでも見てあげようと思って」
オミ「うぬう〜ますます許せん！お前のような奴らが、この神聖な秋葉原を薄汚いリアル女体で汚していくのだ！」
クリス「言っておきますけど、私はそこのおばさんみたいに身も心も汚れてなんかいませんよ〜だ」
ぷぢ子「オミさんよォ、オレは一生あんたについていくぜ！リアルティムポも知らないメスガキなんか一撃でやってくれ！」
オミ「なんか勢力図が複雑になってきた気が……ええい、ゲームスタート！クリアできなければ秋葉原は木っ端みじんだ！」
勝平「むっ、さすがにスペシャルバージョン。メッセージもボイスもグラフィックも、なんにも出ない！」
オミ「どうだ、これでは攻略も役に立つまい！」
ぷぢ子「あのー大将、姑息すぎると思うんですが」
オミ「勝ちゃあいいんだよ勝ちゃあ」
勝平「しかしこれでは……」
クリス「待って勝平さん、私が声をアテるわ」
勝平「できるのかい？」
クリス「アンソロジーを勝平さんの部屋で読んだことがあるから、出てくる女の子の気持ちになりきって……『うぐうっ！うぐうっ！うぐうっ！』」
ケン「ああ、このあゆちゃんは本物だあっ」
ヨージ「こんな素敵なあゆちゃん、初めて聞いたなあ」
アヤ「まるで心が洗われるようだ……十四歳なのに……」
ぷぢ子「ハッ、みんなの視線が全部あの子のところに……まさにイベントあらし！なんて恐ろしい子なの、クリス！」
クリス「ほんにゲームも楽じゃねえ」
勝平「よしっクリアーッ！ありがとうクリス！」
オミ「負けた……これで四天王はほんとうに解散だ……」
ぷぢ子「待ちな。あんたたち、裸一貫、ゼロから本気でやりなおす気はあるのかい？」
四天王「はいっ！」
ぷぢ子「じゃあオレ様プロデュースでよォ、……ごにょごにょ」

――その後、四天王はアイドルユニット「ＷｅｉＢ」（うえいびー）を結成。惜しげもなく乳首を見せるステージパフォーマンスで、一時代を築いたのであった。