大富豪同人物語：Web連載版

――連休最後の日曜。珍しく本宅に戻ってる豪太郎と、お昼に呼ばれたねじぷぢコンビ。
豪太郎「メイド達も連休なんで、僕があり合わせで作ってみたんだけど、どうかな？」
ねじ子「ううん、おいしいよ、このシチュー」
ぷぢ子「いい男ってのはなんでもやれるもんだな！で、話って何よ」
豪太郎「実は、クリスのことなんだけど」
ねじ子「え！いよいよお赤飯なの？」
ぷぢ子「そりゃあ男兄弟じゃあ言いづらいわな」
豪太郎「……違うよ、なんだか最近おかしいんだ。学校も休みがちだし、家にいる時も部屋にこもりきりで。メイドに聞いてみたら、なんだか文庫本を積み上げてアニメビデオに見入ってるらしいんだ」
ねじ子「む？ひょっとしてその本って」
ぷぢ子「こんなやつじゃねえか？」
豪太郎「そうそう、この背表紙が青い文庫本。早川の」
ねじ子「あっちゃー。とうとう来ましたかそこへ。コバルト通り過ぎて」
ぷぢ子「大方『スラン』か何か読んで悦に入ってんじゃねえか？『私だけは違うの』とか言って」
豪太郎「うん、言ってる。なんだか意味がよくわからなかったんだけど」
ねじ子「ハマったよね、オレは『ブルー・ソネット』だったよ。全話アニメにならなかったのが今でも納得いかねー！」
ぷぢ子「ハマったねえ、オレは『地球へ…』だったよ。劇場版アニメのキャスティング、今でも納得いかねー！」
豪太郎「すまないけど先輩として、いい方向に導いてもらえないかなあ」
ねじ子「いいでしょう。じゃあぷぢ子、シナリオはこんな感じで……」
ぷぢ子「いいねえ、じゃあここで豪さんにも協力してもらって……」
――クリスの部屋。寝間着のままビデオ「新世界戦隊」を眺めつつ。
クリス「……生きていくって疲れる。みんなと調子をあわせなきゃいけないし、ちょっとでも違うってわかったらこんな風に抹殺されちゃうんだわ。ああ、なんで自分だけこんなに違うんだろう……」
――「どん！」ドアを蹴破り、入ってくるねじ子とぷぢ子（上下黒スーツ姿にサングラス）。
ねじ子「こんなところに隠れていたのか、秋月クリス。おっと、それはこの惑星（ほし）での名前だったな」
ぷぢ子「さあ我々の元に戻っもらおうか、呪うべき試作体、ロストナンバーズ！」
クリス「な、何を言ってるんですか？」
ねじ子「記憶がないのか？無理もない、調整中に脱走したからな。いろいろ副作用が出ているんだろう」
ぷぢ子「その幼年体が何よりの証拠だ、今なら捕獲できる！先発隊を全滅させた能力（ちから）もまだ戻ってはいまい」（クリスの手を掴む）
クリス「や、やめてください！」（手をふりほどく）
ぷぢ子「ぐわーっ！」（わざとらしく１０ｍくらい吹っ飛ぶ）
ねじ子「馬鹿な！もう念動力（サイコキネシス）が！」
ぷぢ子「気をつけろ、この力、肋骨ぐらい簡単に逝くぞ！」
クリス「……」
ねじ子「く、くそっ！こうなったら捕獲が優先だ」
ぷぢ子「本部の照会を待ってる暇はないな」
豪太郎「待てっ！」
ねじ子「（急に涙目になって）今は来ないで、豪太郎さん！あなたを敵に回したくない」
ぷぢ子「おい、ちょっと待てよ」
ねじ子「何だよ」
ぷぢ子「シナリオだとここで”なおもクリスを襲おうとする二人、しかし”、だっただろ。なんでお前ヒロイン気取りなんだよ」
ねじ子「ちっちっち。ヒロイン気取りじゃなくて、ヒロイン」
ぷぢ子「ハァ？ゴタクは鏡見て言え」
ねじ子「これが上手くいったらシリーズ化して、豪太郎さんにつまんなかった過去を書き換えてもらおうと思ってたのに」
ぷぢ子「お前こそ不完全な試作体じゃないのか？」
ねじ子「やっぱりそうだったのね！思春期からずっと、感じてた視線はあなたのだったのね！」
ぷぢ子「やめろバカヤロー、これ以上婚期遅れること言ってどーすんだ」
ねじ子「ウギャギャギャー！連邦のオタク狩りだわ！『いい年して漫画ばっかり描いて』『アニメが趣味の人とはちょっとね』『あなたのカップリング邪道だわ』……全部仕組まれていたんだ！力を得た今、オレは復讐に立ち上がるぞ！」
ぷぢ子「ウガガガガガー！連邦のオタク狩り！そう考えると全てつじつまが合う！オレも立ち上がるぞーっ！」
豪太郎「……ごめんクリス、みんな良かれと思ってやってみたんだけど」
クリス「いい。あそこまで違っちゃってるわけじゃないし。ちょっとずつ折り合いつけながら、学校にも行くね」
豪太郎「ありがとう」
ねじ子「（いやに何か落ち着いた声で）最後に、劇場版ロックを見た後の感想を、１７年ぶりに言おうと思います」
ぷぢ子「ネタあわせはしていません。せーの、」
ねじ子＆ぷぢ子「こんなもんよ、こんなもん」