大富豪同人物語：Web連載版

――例によって日曜の昼下がり。お台場海浜公園。
豪太郎「そーれっと。でも意外だったな、ねじ子さんがサッカー好きだなんて」
ねじ子「先週の引っ越し準備で、部屋の隅から出てきたの。えいっ！」
豪太郎「このサッカーボールが？」
ねじ子「いや、まあ、そんな感じ。人にはいろいろと過去があるのよ」
豪太郎「ふうん。僕も学生時代ドイツに留学してた頃は、けっこうやった方なんだ。ほらっ」
ねじ子「ドイツ？学生？……ギムナジウム……寄宿舎……『僕はなんでも知っているんだよ、豪太郎』……」
豪太郎「おーい、どこ見てるんだ。ボールが向こうに行っちゃったよ」
ねじ子「ハッ！私ったら昼間から妄想浸りまくり？彼氏といっしょなのに妄想浸りまくり？理想と現実折り合いつけすぎ？うわーっ恥ずいよ。えーと、ボールボール……ああ、砂浜越えて波打ち際まで……あれ？サッカーの練習をしてる人がいる。ちょうどいいや。すみませーん。ボール蹴っちゃってくださーい」
――バシュウッ！（波ごと蹴られたボールがすごい勢いで飛んでくる）
ねじ子「きゃっ！」
豪太郎「あぶないっ！」
――間一髪、豪太郎がクリア。
ねじ子「何よいったい……ハッ！ぷぢ子？ぷぢ子なの？」
豪太郎「あ、ほんとうだ。ぷぢ子さーん！黒のユニフォームなんか着て本格的だなあ」
ぷぢ子「部屋を掃除してたら出てきたのよ。最近体もなまってたし、シェイプアップも兼ねてトレーニングしてたところ」
豪太郎「でもなんで袖まくりなんか。それにこの寒いのに波なんか蹴ったってあんまり効果は」
ねじ子「あ、豪太郎さんそれは……」
ぷぢ子「人にはいろいろと過去があるんだ！」
豪太郎「そうなの？ねじ子さん」
ねじ子「ええ、特にキャリアの長い同人女にはあるんです……長ければ長いほど、人には言えないやつが……」
ぷぢ子「あるのさ！」
ねじ子「わかったよぷぢ子、原稿は友達怖くない！今度のコミケでもコンビを組もう！」
豪太郎「みんなサッカーが好きなんだなあ。あと２人いればフットサルもできるし。今度大会にエントリーしてみるかな」
ねじ子「え〜、でも体が動くかなあ」
イリア「甘ったれるなねじ子！」
豪太郎「なんだイリア君まで来てたのか。グリーンのトレーナーにアディダスのキャップ……ひょっとして部屋を」
イリア「掃除していたら出てきました」
ねじ子「うわーっ」
ぷぢ子「ドイツでも流行ってたのか？」
イリア「バイエルンFCジュニアユースの『猛き女豹』とは私のことよ。本場仕込みのキャッチングを見せてあげるわ」
豪太郎「ようし、揃った揃った。そうだな、５人目は勝平君でも呼んでみるかな……」
（女子全員、輪になってしゃがみながら）
ねじ子「でさ、やっぱり許せないのってオリキャラがバンバン出て来ちゃうやつだと思うわけよ」
ぷぢ子「そうそう。あと、病気でいきなり死んじゃうのもな。死にそうなのにエロシーンやってたり」
イリア「前世がどうこうっていうのも興ざめだな。あと、女郎足抜けモノ」
豪太郎「（携帯を掛けている）あ、クリス？話があるんだけどさ」
ねじ子「オレ見た中でいちばんへぼんだったのは、学芸会があるわけだけどさ、なりゆきで女装を」
ぷぢ子「見た見た見た！こう、恥ずかしがってるのを愛でるのがたまらーんという」
イリア「すげえオヤジ入ってるよな」
豪太郎「そうそう、勝平君。元気かい？ちゃんとデートしてあげてるかい？」
ねじ子「けどよ、イリアがそうだから言うけどさ、劇場版でケガやって交代して、そん時死ぬほど騒いでるやつらいるだろ？」
ぷぢ子「毎度毎度予定通りなのにな。いやーっ！とか叫んで。叫んだらケガ治るのかってえの。知らねえってえの」
イリア「誰が正ＧＫかわかってねえよやつら。やっぱキーパーはキャッチだよキャッチ。いくら飛び跳ねたって空手チョップ入れたって、止めなきゃ評価に入んねえんだよ」
豪太郎「来月さ、プチテレビ主宰であるんだよ、大会が」
ねじ子「いやその、百歩譲って袖まくりは許すよ。オレも鬼じゃないから」
ぷぢ子「オレも全身ケガだらけなのに空飛んじゃうのも許すよ。試合中にハリ打って治すのも認めるよ。鬼じゃないから」
イリア「でも監督やキーパーの言うこと聞かないで前線にドンと座ったきりの奴って、ストライカー呼ばわりしていいもんかね」
豪太郎「よかったら今から来ないか？」
ねじ子「戦略的にガンなんだよ。個人技で勝って総合力で負けてるって、３年繰り返して。スカウトまでしてもらって」
ぷぢ子「晩成なんだよやつは！ちゃんとユヴェントス入って大金持ちになったんだよ！いいじゃないか！」
イリア「イタリアにおでんの屋台はないからなあ」
豪太郎「うん、みんなサッカーが好きなんだよ。心の底から」
ぷぢ子「やっぱりお前らわかってねえ！こんな辛気くせえとこいられるか！オレは群れるのがキライだ！」
ねじ子「こっちだって願い下げだよ！」
イリア「ああやって拗ねてもさ、結局は髪の長い恋人んトコへ」
豪太郎「あれ？あれ？なんでみんな帰ってくんだい？これから勝平君やクリスも来るのに……いったいどうしたんだい、ねじ子さん」
ねじ子ねじ子「……人にはいろいろ過去があるんです。特にキャリアの長い同人女にはあるんです……長ければ長いほど、人には言えないやつが……」
ぷぢ子「遊びなんかじゃない！同人はオレの夢だ！」