大富豪同人物語：Web連載版

――２０００年１２月３０日午後４時、ビッグサイト。
アナウンス「これにて第５９回コミックマーケットを終了いたします」
ぷぢ子「ふーっ終わった終わった、なんとかコスプレも間に合ったし本も買えたし、よかったよかった」
クリス「あたしも勝平さんにまた逢えたし、よかった、よかった……あれ、お兄ちゃんは？」
ぷぢ子「そういえばねじ子もいねえや。新刊あんなに抱えて、どこに抜け駆けしてるんだ？コスプレの服も持ってきたのに着替えなかったし、ヘンな奴だなあ」

――同時刻、有明ワシントンホテルのスイートルーム。床に散らばる大量の同人誌を見て笑いを止められない♀オタＡ（声・福永恵規）とＢ（声・河合その子）。
Ａ「うひゃひゃひゃーっ！これだからダミーサークルはやめられないぜ！」
Ｂ「ああ。こいつをオークションに出せばまた半年遊んで暮らせる。いざとなったらこの偽造スタッフ腕章もあるし、まだまだカネは稼げるぜ！」
Ａ「まったくチョロいもんだよな同人界も……ん、なにか聞こえないか？」
Ｂ「廊下の方からだ。様子を見てみよう……だ、誰か来るぞ！」

（S.E.）ひゅるるるーきーん　ひゅるるるーきーん
――非常口から歩いてくるセーラー服姿の女性。指抜きグローブつきの左手でヨーヨーを操りながら

Ａ「誰だ！」
ねじ子「鷹の羽産業開発二部総務、麻宮ねじ子。またの名を同人刑事！」
（折り畳みの携帯を開く）
Ｂ「そ、その待ち受け画面……桜の代紋！」
ねじ子「壁際まで張ったこの麻宮ねじ子が、何の因果か落ちぶれて今じゃ委託サークル。笑いたければ笑うがいいさ。だがな、同人を愛する心までは腐りきっちゃあいねえんだ。てめえら、許せねえっ！」
Ａ＆Ｂ「ぐわーっ！」
――ホテルから引き上げるねじ子を待つ、スーツ姿の男。
男「相変わらず見事な腕前だな」
ねじ子「神豪一郎……」


――てなやりとりを物陰で見張る二人。
ぷぢ子「生き生きとした顔しやがって……あいつら、コスプレイメクラのマニアじゃねえのか？」
クリス「わたしも勝平さんに求められたらやらなきゃいけないのかしら……」
ぷぢ子「あー、男子はいくつになってもバカだから。基本的にはやってあげるべきだな」
クリス「来年はボイストレーニングに通わなきゃ」