大富豪同人物語：Web連載版

――日曜午後。ビッグサイト東４。喫煙フロアでくつろぐねじ子。
ねじ子「ふわ〜っ。せっかくの誕生日でお休みの日なのに、なんであたしこんなとこいるんだろ。まあ豪太郎さんも年末で忙しいのよね、豪太郎さんも年末で豪太郎さんも年末で年末が豪太郎さんの……ウキーッ！クリスマスのレストラン予約なんかいらねーからオレ様にチケットをくれよーっ！よそいきも買わなきゃいけないし……がんばってるみたいだけど、あの人まだ同人女のツボがわかってないわね〜って私何ひとりごと言ってるのかしら……愚痴っても仕方ないわ、もう一回りして帰ろっと。おや」
アンミラ姿の売り子「よかったらご覧になってってくださ〜い」
ねじ子「なになにこのあと西館でアトラクションショー？まあヒマだし、せっかくだから行ってみるか……」
売り子（ねじ子が西館に向かうのを見届け、携帯を取り出す）
「メ・ガドラ・ダよりメ・ギノガ・デへ。ネジボガゾチラビムバッタ。繰り返す。ネジボガゾチ……」
――西館。机が片づけられ、イベントが始まっている。
ねじ子「あーもうベタベタな風景だなあ。今やってるのって何戦隊だっけ？日曜朝になってから見てないなあ」
怪人ドコイツ男（声・掛川裕彦）
「グアハハハーッ！気に入った、ここをクタラキ総統閣下第二の拠点とするのだ！」
戦闘員「クタラキー！クタラキー！」
怪人「まずは邪神復活のため、生け贄をさらってくるのだ！」
戦闘員「クタラキー！」
ねじ子「そうそうここで子供がさらわれて助けてー」
戦闘員「クタラキー！」
ねじ子「ってオイ！私をさらうなよ！おい！聞いてんのかコラ！」
怪人「なんだ、こんなのしかいなかったのか。だいたい生け贄は乙女と相場が」
ねじ子「くだらねえ客いじりやってんなよコラ！」
怪人「む、生きのよすぎるやつめ。早いところやってしまおう」
――妙に手際よく磔（はりつけ）にされるねじ子
ねじ子「うわーなんだかマヌケでバカすぎる誕生日だよ〜27回目がこんなのってないよ〜くたびれて今日は一人静かにラーメンでもと思ったらテレビ朝日が取材に来てムリヤリ喋らされたくらいマヌケだーっ！くそう、こんな目に遭うのも全部豪太郎さんがいけないんだ！助けろよ！」
怪人「おや？キミいま、なんて言ったんだい？」
ねじ子「豪太郎さん助けて」
怪人「もっと大きな声で！」
ねじ子「豪太郎さん助けてー！」

♪（ねじ子の胸ポケットの携帯から、哀しげなギターの着メロが流れ出す）

戦闘員「どこだ！どこにいる豪太郎！」
怪人「（西館からフロアに出て）そこか！」
――連絡用エスカレータの上。片膝を立て、見得を切る三つ揃い姿の豪太郎
豪太郎「本あるところ必ず現れる……本売られるところ必ず行く……正義の大富豪、秋月豪太郎見参！」
怪人「かかれっ！」
豪太郎「豪パーンチ！」
戦闘員「クタラキーっ！」
豪太郎「豪ーっエンドッ！」
怪人「帝国に栄光をーッ！」
――ねじ子を助け出す豪太郎
豪太郎「大丈夫かい」
ねじ子「うわーありがとうっていうかやりすぎだよ豪太郎さーん！えーん」
豪太郎「そうかい？イリア君に頼んで知り合いのコスプレサークルにも手伝ってもらったんだけど……」
ねじ子「もう少しふつうでいいよーっ！」
豪太郎「じゃあ、お詫びに。誕生日プレゼント」
ねじ子「これ……サークルチケット？」
豪太郎「クリスのやつ、年齢ごまかして申し込んでたんで。保護者役ってことでお願いできるかな」
ねじ子「……これで、チャラじゃないからね」
豪太郎「はいはい」