大富豪同人物語：Web連載版

――アニメ＆ゲームグッズ専門店「マニアメイト」にて。
「へえー、こんなお店があるんだ」
「豪太郎さんはここ来るの、初めてよね」
「ああ。わりといい感じのお店だね。毎週来ようかな」
「来てすぐに悪いんですけど、豪太郎さん、あの、お願いが」
「なんだい」
「次に出す本の資料を買って来るんだけど、その……」
「ああ、僕に見られちゃまずい内容なんだね」
「ごめんなさい」
「いいよ、ＣＤのコーナーに行ってる。終わったらおいで」
「ありがとう……さてと、久しぶりにやおってみるかーっ！やっぱり彼氏ができてもやおいはやめられないよな！学園ものの新刊たっぷり出てるし……あれ？」
「いらっしゃいませ」（妙にホストっぽい顔と服装の店長、声・速水奨様）
「すみません、お店を間違えました」
「いえ、こちら当店のやおい専門コーナー『ボクはもう汚れてるんだ＆オレには関係ねえよそんなの！』でございます。私店長の孕（はらみ）丈です」
「はあ」
「こちらでは女性同人作家、特に白ブラウス着用の方に心ゆくまでやおいを楽しんでいただくのがモットーでございます。ごゆっくりお品をお選びください」
「へー、立ち読みもオーケイなんだ。どれどれ……」
「『へっへっへこいつ女みたいな顔してやがるくせに立派なモノ持ってんじゃねえか』『やだっ助けて！』『いくら叫んだって奴は来やしないぜ！』『やっちまえ！』……」
「何してるんですか！人の肩越しで声あげたりして」
「当コーナー名物の朗読サービスでございます。これからがいい所なのですが」
「やめてくださいよ！一人で読みますよ！」
「そうですか残念だなあ」
「まったく……」
「♪ラララ〜ぶあつい先輩の胸板が〜ボクの乳毛を刺激するの〜ああ禁断の放課後シャワー室〜」
「黙れよ！」
「当コーナー名物その２、生歌サービスでございますが」
「ムード歌謡みたいに腰振って歌うなよ！」
「そうですか残念だなあ」
「もう我慢できない。帰るわ」
――店を出ようとしたねじ子を、白ブラウス同人女ちゃんたちが取り囲む
「ちょっと丈様に失礼じゃない？」
「お初で声掛けてもらっただけでも名誉なのに！」
「あとでシメないといけないわこの女！」
「（泣き顔のねじ子）うわーん変な店来ちゃったよ〜助けて豪太郎さーん！」
「どうしたんだい、ねじ子さん？」
「豪太郎さん、その格好」
「サービスのいい店なのかなあ。コスプレコーナーで店員に呼び止められて、着付けさせられちゃって。ガクラン」
――それを聞いて息を飲む、丈の取り巻き達
「ハッ」
「それは」
「伝説の白ラン！」
――急に瞳をうるませる丈。
「ききききっき、キミはっ！（店員の制服を脱ぎ捨て、真紅のガクラン姿になる）オレのクラスメイトだった浩介じゃないか！」
「豪太郎ですけど」
「そうか、記憶を失って……仕方ないよな、あんな目にあったんじゃあ。でもオレがこれからは守ってやるよ！もう二度と悲しい思いはさせないからね！」
「逃げよう、ねじ子さん。何か知らないが、この店員の耳から黄色い汁が出てきてるし」
「そうね。（小声で）ちょっと見守ってたい気もしてきたけど……」

この後、マニアメイトのフリーノートには丈×豪太郎の妄想イラストやショートショートが大量に描かれる様になり、半年後には一大ジャンルを築きあげ、毎月どこかでオンリーイベが開かれる様になったのであった。

丈「待ってるからね！オレ、いつまでも待ってるからね！」