大富豪同人物語：Web連載版

（日曜の夕方、西日射す郊外のワンルーム。大学ノートに向かってネームを切るねじ子）
「『明日からもビシビシ鍛えていくぜ』『大丈夫ですよ、オレ、先輩のドレイですから（はぁと）』『こいつぅ』……Endっと。やっぱネームは朗読しながらやるのが一人暮らしの醍醐味って感じよね。さてと、キャラのラフにペンでも入れてみっか」
ぎぎぎぎっ
「あれ？」
ぎぎぎぎぎぎっ
「インクが悪いのかしら」
ぎーぎぎぎぎっ
「ぎーっ！箱買いしたＧペン全滅やんけーっ！（急にふてくされた声で）あー気分転換気分転換ー。気分転換しないとあたいは死んでしまうますー。死んじゃ困るから息抜きをしないといけませーん。あえてこのスエット姿のままコンビニへ立ち読みしに行きまーす」
（コンビニチェーン「三年寝太郎」店内にて）
「ふー落ち着く落ち着くー。気分転換にハーゲンダッツとえびせんと午後ティーと……あ、キャスターの１ミリひとつ」
「かしこまりました」
「あらやけに声が腰に来る店員だわ……ってキャーッ！豪太郎さん!?」
「いやあねじ子さん、いらっしゃいませ」
「こんなとこで何してるんですか？」
「今度このチェーンを傘下に納めたんでね、現状視察というところさ。ところで浮かない顔してるね」
「実は……」
「なるほど。じゃあ今度の週末、いいところへ連れていってあげよう」
「えー本当ですか、ありがとうございます！（あーナプキンとか資料用のエロ本とか買わんでよかった〜）」
（次の週末、人里離れた山村にて）
「ねじ子さん紹介するよ、こちら人間国宝の刀鍛冶、七代目徹討蔵先生（声・青野武）だ」
「はは、あんなに小さかった豪太郎坊っちゃまも、いよいよ年貢の納め時ですかな」
「いや今日は、こちらのお嬢さんのために極上のペン先をお願いに参りました」
「なるほど……この討蔵に取って文句のない相手。しかと承知いたしました。しかし条件が一つ」
「と、申されますと」
「こちらのお嬢さん――ねじ子さんと、剣道でお手合わせ願いたい。太刀筋を見れば自ずとペンさばきもわかろうというもの」
「どうだろう、ねじ子さん」
「中学時代にちょっとやってたから全くの素人じゃないけど」
「ちなみに先生は名誉八段だ」
「こ、殺される……」
「はは、手加減はするから大丈夫。道着に着替えて来なされ。孫娘が使っていたのが取ってあったはずじゃ」
（離れの道場にて、向かい合う討蔵とねじ子）
「さ、どこからでも打って来なされ」
「（ど、どうにでもなっちゃえ！）おりゃあーっ！」
「（急になよなよし始める）あーそれそれ！それじゃよーっ！」
「？」
「普段は線の細い色白な少女が、竹刀を持ったら結構強気！ナイス！手ぬぐいに包まれたロングのストレートヘア！練習中、面越しに男子とタメ口利いたりして！袴って結構ストイックだよね！やっぱ紺色ってバカコギャルじゃなくて無口少女のためにある色だよ！あと道着の下にＴシャツって興ざめだよなーここは第二次性徴の大事な体を犠牲にしても先っちょが擦れちゃう〜とか言いな」
「突きーッ！」
「おごぐわっ」
「見事だ、ねじ子さん」
「な、なんかこいつは瞬殺しないといけないような気がしたの」
「さすがだ」
「……（なぜか幸せそうな顔で失神しながら口から泡を吹く討蔵）」