トゥトゥーラの島

　自分でも意外な気がするのですが、同人誌のフリートークは元々苦手でした。本編を書きあげるのに精一杯なのと、言い訳や本編に盛り込めばいいような事ばかり書いてしまうので。
　しかし今回話を書くにあたって「大富豪」を読み返していると
「なんでオレはこんな話を書いたのだろう？なんでねじ子さんはこんな事言ってるんだろう？」
と戸惑うことがたびたびありました……自分でも忘れちゃってるんですね。そんなものを人に読ませるというのもどうかと思うのですが、副読本や備忘録を兼ねてこのメイキングを書き留めることにいたしました。

　今回のお話、原案では「時をかけるねじ子」でした。思春期を迎えてもまだアニメが好きなせいで、周りからだんだんと浮いていく自分に悩む１４歳のねじ子と、正体を明かせないまま自分自身を励ましていく大人になったねじ子……そんなあらすじでした。割と気に入っていたんですが、タイムスリップを無理なく話に組み込むのが難しくて、これは残念ながら頓挫。
　そうしているうちに梅雨が明け、横浜は連日の猛暑。スコールみたいな雨も降ったりして「なんだか南の島に来たみたいだなあ」と感じてましたが、そのうち「ねじ子達がプライベートビーチに行ったらどうだろう？」「年中忙しい豪さんにも、夏休みをあげてみたらどうだろう？」「昔の子供向け番組の再放送を見て、ねじ子と豪さんで会話がかみ合わなかったらどうなるか？」……と思いつき、紆余曲折ののちになんとか完成いたしました。

　以下、本編と比べながらお読みいただければ幸いです。

【プロローグ】
・豪太郎のマンション
　２００４年２月にみなとみらい線が開通したこともあり、横浜駅〜中華街にかけて高層マンションがいくつも建築中です。豪さんちもその中の一つ。構成は以下の通り。

Ｂ１：住人専用フィットネスクラブ
１Ｆ：２４時間営業のスーパーとコンビニ
２Ｆ：ＰＣ量販店
３Ｆ：２４時間営業のＤＴＰショップと画材屋
４Ｆ：大型書店とネットカフェ
５Ｆ〜：居住スペース
最上階：まるごとねじ子と豪さんの部屋。
その他：全室光ケーブル・各種衛星テレビ対応。

　うるさそうなマンションだなあ(笑)。でもこれは全て出不精のねじ子さんのために、豪太郎さんがセッティングしたのでした。なお最近実際に見た物件（横浜市中心部）に「温泉完備」というのがあって驚きました。

・サングラスにヘッドフォン姿で、やけになったかの様に足をばたつかせている、ねじ子
　原案では全裸。いくらなんでもひどいと思ってそれは削ったまではよかったが、今度は何を着ているかを書き忘れてます（ダメじゃん）。たぶん執筆中の格好のまま飛び込んだと思われ。

【ジオテックミュージアム】
・元ネタなど

→「５０周年記念パーティー」「初めての商品は木馬」：(株)ナムコで実際にあった出来事
→その木馬の納品先：伊勢佐木町にある「横浜松坂屋（白塗りの建物）」
→伊勢佐木町：みなとみらい地区とは対照的な、カオスな活気があふれる街。週末の夕方に出掛けると、どこの国にいるのかわからなくなる
→横浜松坂屋：本館と西館の２つの建物があったのですが、経営難のため２００１年から西館をＪＲＡ（日本中央競馬会）に賃貸、現在は場外馬券売場に

　そんな風景を眺めているうちに「ジオテックミュージアム」のアイディアができあがりました。

・パニックに弱い海老沢さん
　この度「専務取締役」に昇格も(*1)、いまだにプレゼンの前日には眠れなくなる。お腹もこわす。運良く眠れても、夢の中でプレゼンの練習をしているので気疲れが抜けません。足もみサロンの常連であります。
(*1)「プロフィール」の「常務」は誤植です、すみません。修正しました。

・ニキシー管
　実物はこんな感じ。いろんな販売機の金額表示に使われていたこともあります。

・マニアックな知識を披露するイリア
　プライベートはともかく、仕事中は普通の人だった筈なのに……。

・草薙君
　ゲーム会社、ミカドエンターテイメント開発室長。海老沢さんの隠れ（？）ファン。ミュージアムオープンと聞いて、（仕事をほっぽりだして）はるばる大阪から駆けつけた。

【妻ＤＶＤ】
・タイトル元ネタ
　昨年末「姉ＤＶＤ」というエロ漫画が（なぜか）一部でヒットしていたので、そこから。

・リビングのプラズマテレビ
　アニメ鑑賞専用にされてしまいましたが、ねじ子は起き抜けにテレビを見ないタイプなので（イライラするから）、翌朝からもちゃんと豪さんは朝のニュースが見られます。

・アニメ鑑賞を中断させた時の怒り様
　豪さんは「そんなに大切なら、なぜ自室で見ないんだろう？」と不思議に思っています。

・現実は、ほら
　アニメ「聖闘士星矢」から、鳳凰幻魔拳を放ったフェニックス一輝のセリフ。両手をＷの字に広げて言うとベスト。

・ご飯の時は、テレビがダメ
　小学生くらいの子供に好きなだけテレビを見せる（特にゴールデンタイムを過ぎても）のはどうかと思いますが、「絶対見せません」って力んでいるのもどうかなあと思ったり。

・この頃はもう外国に行ってたんだっけ？
　親父さんとの仲がしっくり行かなかった豪さんは、十代半ばから海外留学しています。大学院に進んだところで親父さんが急死したので、いやいやながら会社を継ぐために帰国。で、今に至る。

【コスプレ喫茶「袴」】
・ガチャガチャ専門店
　秋葉原にある「秋葉原ガチャポン会館」がモデル

・ガチャガチャに不慣れな豪さん
　これが人生初ガチャのためです。あわてぶりを浮き出すために、いつものスーツ着用でもよかったかも。

・銀色の巨人
　誰がどう見てもウルトラマンですが、特に「帰ってきたウルトラマン」を意識して書きました。理由は後編にて。

・作務衣姿のレオン
　オレが社員寮にいた頃、同室の人がプライベートでよくこういう格好をしていました。料理が上手いのなんの。その節は、いろいろとお世話になりました。

・英国パブ風メイド喫茶「袴」
　ウエイトレスが巫女さんだったり大正時代の女学生だったり弓道の胴着着てたりと、とにかく全員「袴」姿。バイト生活に疲れていたレオンが、あやしい店長にスカウトされて（ヒドい目にあったものの）そのまま雇われマスターとして居座ることに（Web連載版「バレンタイン作戦」を参照）。
　店名の元ネタはＮＨＫ−ＦＭの長寿番組「日曜喫茶室」。司会者が「はかま満緒」という著名な放送作家さんなのであります。

・居場所
　「自分なりのカフェを作りたいんですよ」という思いは、千利休の時代から延々と続くオタ男子の夢（そうか？）。レオンは初登場の時から居場所が定まらないキャラだったのですが、ようやく落ち着くことができそうです。今度は仕事の合間に探偵の真似事もさせたいなあ。

（０４．０８．２２　後編に続く）