大富豪同人物語：Web連載版

――日曜昼下がり。自室でごろ寝の……
ねじ子「ううっ寒い。雨か……静岡育ちには酷な冬だよなあ。いっそ積もるくらい雪が降ればウヒャヒャヒャヒャー！ってはしゃぐ気にもなるのだけど……お腹すいたな。コンビニ行くの、めんどくさいな。ゆうべ鍋、空にしなきゃよかったな」
――携帯が鳴る。
ねじ子「もしもし、ぷぢ子？」
ぷぢ子「あ、こんにちわ。諏訪内さん」
ねじ子「？」
ぷぢ子「ちょっと近くまで来たんですけど、お邪魔してよろしいかしら？」
ねじ子「何気取ってんの？」
ぷぢ子「そんな、いつもと同じですわよオーホホホホ」
ねじ子「まぁ、いいけど……あ、できたら途中のファミマで牛乳とチョコと、冷凍そばめし買ってきて」
ぷぢ子「かしこまりましたわ」
――１０分後。ぷぢ子の持参した重箱をがっつく、ねじ子。
ねじ子「なんだか悪いね」
ぷぢ子「いえいえ、大事なお友達ですもの。手作りのお弁当ぐらいどうということは」
ねじ子「いつもと違うな」
ぷぢ子「そ、そんなことはございませんわよ」
ねじ子「あやしい……お、食べ終わったらなんか底に書いてあるぞ。パ…」
ぷぢ子「ふっふっふ。気づいてしまいましたね？……さあ、おとなしくパスを出しな！」
ねじ子「パスって？」
ぷぢ子「去年の冬コミで見せてもらったアレだ」
ねじ子「ああ、無期限パス」
ぷぢ子「ゆうべ夏コミの申込書を書いていて、急に不安になったんだよ。いまでこそオレ様しか知らない様なジャンルだからいいものの、万一アニメ化されちまって香ばしい厨房どもがダニの様に群がりサークル当選倍率が跳ね上がったらと思うと、どうにも心配でたまらん！」
ねじ子「香ばしいのはお互い様じゃないのかなあ」
ぷぢ子「『黙れ！あれを額面通りに受け取るな！『デッサン狂ってる〜』『顔マンガでごめ〜ん』『このコマのヒカルは○○ちゃんに人身御供決定！（きゃーっ）』なんて、オレたちにとってはほんの挨拶代わりだ！」
ねじ子「そうだったのか…」
ぷぢ子「あのパスがあれば、どんなジャンルでもオールフリーって寸法さ。どうせ今年の夏は、新婚旅行かなんかに出かけるんだろ？いらないだろ？」
ねじ子「いや、私も出るけど。夏コミ」
ぷぢ子「きいいいいっ！また倍率が！」
ねじ子「たぶんジャンル違うよ」
ぷぢ子「わからないわよ、この女ギツネ！いまは違っていても売れ線と見るとフラフラ〜っとジャンルを移してきて『あ、実はこのゲームやったことないんですけど』『キャラがかわいいから発作的に本、作ってしまいました（はぁと）』とかフリートークでいけしゃあしゃあと抜かしやがるんだわ！」
ねじ子「暑くても寒くても毒が出てくる人だなあ」
ぷぢ子「というわけで、人が一生の間に『書き上げる原稿』と『起きている時間』と『味わえる幸せ』は限られているのだよ。だからこんな盛りのついたメスネコが持ってるパスは、この薄幸の美少女たるあたいに来るべき運命」
ねじ子「あのー、基本的なこと確認していですか？」
ぷぢ子「なんだ」
ねじ子「あれは『入場フリーパス』であって、『サークル参加フリーパス』じゃないよ」
ぷぢ子「……ええぇっ！」
ねじ子「まぁ、いつものことだからいいけど。で、そうまでして参加したいジャンルって何」
ぷぢ子「教えない」
ねじ子「別に後追いしないわよ」
ぷぢ子「本当に？」
ねじ子「本当に」
ぷぢ子「お、オリジナルのドラマＣＤ。ねじ子や豪さんたちにも出てもらおうと思ってた」
ねじ子「それだとアニメ化なんかないじゃあ？」
ぷぢ子「でも、わかるの。それを買ったお客さんが感動して、アニメ会社に送り付けるの。北極プロデューサーとかに。『どうしてこんな素晴らしい作品を見過ごしているんですか？プロとして恥ずかしくないんですか？』って感想文つけて。それが１つや２つじゃなくて。もう速攻で会議開かれて、三顧の礼で私は迎えられるのよ。社長室でスタッフ全員土下座して『我々の目は、ふし穴でした！』ってあやまるの。すぐに『いいですよ』って顔を上げさせると、もうみんな涙でぐしょぐしょに」
ねじ子「黄色い救急車ってみんな言うけど、見たことある人いないよね」
ぷぢ子「どういう話の展開だよ」
ねじ子「それはこっちのセリフだ。ところで我らが小デブ同盟に危機が迫っているのだが。


肥満を制御する司令塔遺伝子、東大チームが発見
>肥満にかかわる遺伝子グループを統率する、司令塔役の遺伝子を、東京大学医学部の
>門脇孝・助教授らが突き止めた。この遺伝子の働きを弱めたマウスは、体重が約３分の１になり、
>体内の脂肪も約１０分の１に減少した。糖尿病治療や、やせ薬開発の手がかりになりそうだ。
>米科学誌ネイチャー・ジェネティクス２月号に発表された。

遺伝子操作！東大医学部！成功した暁には国家による『小デブ狩り』が始まるのよ！」
ぷぢ子「抵抗しようにも、小デブはめんどうくさがりが多いからなあ。しかし先週に続いてまた読売新聞だな。読売の記者には小デブが多いのか？」
ねじ子「きっと彼らこそが、政府に隠された真実を伝えてくれるメッセンジャーなんだわ！明日から読売しか読まない！読売しか信じない！」
ぷぢ子「（特命リサーチ200X IIの口調で）
『読むだけで痩せられる新聞が存在すると言う！我々はその驚異について、科学的な分析を試みた！』」
ねじ子「阿部ちゃんまたトリックを解く役だよ〜。どさくさで『孔雀王』の話、してくれないかなあ」
ぷぢ子「どうでもいいけどこの人がバツニって設定、ストレートすぎないか？戸田さん嫌がったんじゃないのか？」
ねじ子「設定なんて飾りです。偉い人には、それがわからんのですよ」
ぷぢ子「はっきり言う……気に入らんな」