●●　独逸ワイド劇場〜皇帝(シュナイダー）は見た！美しきSGGK 華やかな私生活の秘密〜 　●●

【ご注意】

　この作品はアラフォーの坂をとっくに越えた作者が、思い通りにならない毎日を忘れるかのように書きなぐったものです。


【出演】

日本代表ＧＫ 若林源三…若林源三（声・鈴村健一）
家政婦…カール・ハインツ・シュナイダー（声・難波圭一）



　――七月のハンブルク、若林の自宅。ソファでくつろぐ源三。
源三　「さすがにちょっと疲れたなあ。でも今回はベスト十六まで行ったし、川島さんもいい動きをしていたし、俺もまだまだ練習しないと」
　――チャイムが鳴る
源三　「特に約束は入れてない筈だが？」
　――ドアを開けると、メイド服姿の大柄な男が立っている。
源三　「……どなたですか？」
シュナ「（むりやり甲高い声で）大沢家政婦紹介所ミュンヘン支店から参りました、カール・ハインツ・シュ」
源三　「お引き取り下さい」(ドアを閉めようとする）
シュナ「閉めないで！閉めないで！」
源三　「どう考えても閉め出すだろう」
シュナ「ワールドカップでお疲れでしょうと思いまして、ご友人からの依頼でこちらのお手伝いを」
源三　「最初から破綻してる設定を押し通すなよ！」
シュナ「何のことかしら？」
源三　「……俺はまだオフをもらってるからいいけど、バイエルンはもう合宿に入ったんじゃないのか?」
シュナ「えっとー、監督にー、源三の事が−、ギザカワユスって言ったらー」
源三　「どこで覚えるんだそういう言い方」
シュナ「んとねー、nicolaとかラブベリーとかー」
源三　「中学生向けだろう、それ」
シュナ「あーなにー源三くわしー！なんでー？なんでー？」
源三　「……不法侵入者を素手で撃退したら、たぶん警察にはとがめられないぞ、と」（胸ぐらを掴む）
シュナ「やめて！顔はやめて！女優の顔を殴るなんて最低！」
源三　「お前ワールドカップの間もずっと、そんなこと考えてたのか？」
シュナ「…（うつむいて『のの字』を書き始める）」
源三　「川島さんならベルギーに行ったから当分会わないぞ」
シュナ「そう！それすっごい心配してたの！だってアイツいっつも源三にくっついて話しかけたり肩に手を掛けたり」
源三　「同じポジションで練習してたから当然だろう」
シュナ「ホモ疑惑が上がってるのに？」
源三　「あれは噂だよ」
シュナ「噂じゃない！あんなゲイ専門の下着サイトに載っちゃうような奴はどう考えたって」
源三　「お前、人のこと言えるのか？」
シュナ「……（また『のの字』を書き始める）」
源三　「気持ち悪いからやめろよそれ！」
シュナ「あーいま気持ち悪いって言った！私のこと気持ち悪いって言った！」
源三　「……どうすれば許していただけるんですか？」
シュナ「一回！一回でいいからやらせて！部屋の掃除！」
源三　「帰ってきたばかりだから別に散らかってないけど、それで気が済むならさっさとやってくれ」
シュナ「いまの着ボイス、いただきました！」
源三　「殴られないうちに！」
シュナ「はいーッ！」
　――綺麗に整頓された源三の部屋。こぼれる笑顔を隠せないまま、部屋をチェックし始めるシュナイダー。
シュナ「ああー、もう几帳面なのはジュニア時代からぜんぜん変わらないんだからー。チェックの甲斐もまるで……おおっ！」
　――ベッドの下をまさぐるシュナイダー。指先に雑誌の感覚。
シュナ「古典的だなあ、こんなところに隠すだなんて。もういい年してー」
　――取り出してみると、サッカー雑誌の束。
シュナ「ってカモフラージュも完璧って感じで中を開けるとこう、日本では見られないようなブツが……ないわね。これも、これも、これも……いや、逆にあやしい！この雑誌なんかホラ、川島といっしょに肩なんか組んで！キーッ！」
源三　「んな事じゃねえかなと思ったんだよ、片付けてなんてやってねぇじゃねえか」
シュナ「か、片付けてるわよ。こ、こんな雑誌なんか集めちゃって」
源三　「自分が載ってる奴を持っててどこがおかしいんだよ」
シュナ「……（みたび『のの字』を書き始める）」
源三　「またかよ、お前も載ってるだろ、ここんとこ」
シュナ「あ、ホントだ！うれしい！」
源三　「じゃあそういうことで」
シュナ「そういういことで？」
　―─源三、壁のボタンを押す。足下の床が開いて、ピ○ゴラスイッチみたいにいろんな部屋を転がっていくシュナイダー。
シュナ「あーららららーらららーらー！」
　――最後に二階の窓から外へ投げ出され、馬車の荷車に乗っかるシュナイダー。
シュナ「ノーンッ！」
源三　「じゃあ、ミュンヘンまで遠いけど、がんばって」
シュナ「（死にそうな声で）ねぇねぇ知ってる？昔のサッカー選手は、アンダーサポーターに女性用ショーツを履いてた事があるんだよ。♪まーいにーちーひとーつー…」